環境に優しい街づくりを

                                 小野寺  修

 
 
夏のある日、東京の友人が飛行機から降り立って最初に出た言葉が「あー空気がおいしい」だった。
 次の日ホテルへ迎えにゆくと「こちらの水は、そのまま飲めるのだね」と感心した口調で言った

函館に住む私たちが毎日ごく当たり前に吸っている空気、飲んでいる水が大都市から
来た人間には感激ものなのだ。首都圏では夏、水道水のにおいがひどくて、どの家庭でも
浄水機をつけ、又冷蔵庫にはミネラルウオーターを常備していると話していた。

超過密の大都市では空気の汚れ方がひどいのも想像できる。一方、函館は周りを海に囲まれた
海峡都市である。海からの風が常に吹いているので、いつも新鮮な空気を吸える。

水道の水も市街のすぐ後ろにある山の清流から直接取水しているので、ろ過や殺菌の必要が
ないほどきれいだそうだ。都市の規模もほど良い大きさで、騒音や公害を発生する工場も少ない。

この街に住む我々は、それはど恵まれた環境にいる。

しかしこの街も、我々が気の付かないうちに足元から汚染がすすんでいるようだ。
最近、住吉町に住む友人からこんな話を聞いた。そこの漁師が言うには、以前のように
海草が育たなくなり、周辺の魚介類も減っているという。

道路にまかれる夏の除草剤や、冬の融雪剤が影響しているのではないかとその友人は話
していた。住吉の浜は陸地が1キロメートルにも満たないため、それによって汚染された雨水が
浄化されないまま海に流れる。それだけ海の生物に対するダメージが大きいとのことだ。

四十年ほど前、私が子供だったころには、住吉の浜でカニや貝を取った磯遊びの懐かしい
思い出がある。その浜も今や死につつあると聞いて、衝撃を受けた。
でもまだ函館山の
周りの海では、ウニやアワビが豊かに生息しているようだ。高速船とアクアラングを使って
密漁している事件が新聞記事をにぎわすくらいだから、かなり豊富なのだろう。
ウニ、アワビは汚れた海では育たない。
30万人都市のすぐ近くでこんなに魚介類が
豊富なところは、日本でもまれではないだろうか。
函館山の存在が、この海を育てている
のは間違いない。しかし、この山の緑も年々衰えが目立っているという。ある人によれば、
このままいけば数十年後には、ハゲ山になる可能性もあるとのことだ。野鳥を定期的に
観察している人も昔に比べて種類も数も減っていると言う。登山する自動車や、バスの
排気ガスが原因なのかもしれない。

ドイツにフライブルグ市という町がある。人口は二十万人弱で、エコポリス(環境都市)と
呼ばれている。「美しい自然を最優先に」をモットーに、市民と行政が環境問題にさまざまな
方向から取り組んでいる。排気ガスを少なくするために市内への自動車の乗り入れを制限して、
バスや電車を活用する。太陽エネルギーや生ごみが発生するガスを利用して、効率の良い発電、
給湯、暖房のシステムを作り上げている。生活ゴミの分別を徹底し、資源化できるものを
再使用しながら、将来はごみをゼロにすることを目標にしている。
この環境優先の街づくりは
70年代、近郊に計画された原子力発電所への反対運動から生まれた。それを契機に大量生産、
大量消費、大量廃棄そしてエネルギーの大量浪費のサイクルを変革しようと、街全体が動き出したのだ。

九州の水俣市も環境問題に積極的に取り組んでいる。二十三分別という全国指折りの細かい
ごみの分別を行っている。同市は悲惨な水俣病の経験をバネに「環境モデル都市」を
目指しており、環境管理の国際標準規格「IS
O14001」の認証も取得した。

これを機に小中学校の環境教育を広げるために、「学校版ISO」を創設したそうだ。
市内の全十六校が「電気・水・紙を大切に使う」「給食の残飯を減らす」「分別収集に参加する」
などの目標を掲げて活動している。廊下の壁に毎日の電気、水の消費量のグラフが張られ、職員室や
教室には再使用する紙を分別する棚が設けられている。

函館の学校でもこのような地道な環境教育が必要だと思う。

函館の温暖な気候、風光明媚な土地に魅かれて本州から移住する人も少なくない。
しかし、この恵まれた自然環境も、市民と行政の積極的な努力なしでは守れないのではなかろうか。
もちろん環境問題は地球的規模の課題だから、我々の努力だけでは限界がある。

だからといって手をこまねいていては悪くなるばかりだ。まず函館山に登る自動車は、排気ガスを
出さない電気や天然ガスを使うものに限るとか、融雪剤や除草剤の使用を制限するなど考えるべきだ。
また函館の地の利を活かして、風や波の力を使った発電もクリーンなエネルギー源として使うべきだ。

小中学校の授業に環境を考える時間を作り、近くの山や海に出かけて自然保護の体験学習をする。
空気や海や川を汚さないために何ができるか、ごみをどうしたら減らすことができるか、
行政まかせではなく市民が一諸になって考え、環境に優しい街づくりのためにできることは
すぐにも実行していくことが必要だと思う。

こうした運動をかさねることにより、観光都市函館が環境優先のモデル都市ともなること
を期待したい。

 

              住所    函館市青柳町1番1号

              名前      小野寺 修    54歳

              職業      JR職員 

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