函館市議会議長                  平成15年8月27

福 島 恭 二 殿

       

                         函館の新図書館にのぞむ会

                           世話人代表 鎌鹿 隆美

                                連絡先 函館市駒場町9−10 自然倶楽部気付

                         電話・fax 0138315339

 

                  「函館市中央図書館」の建設にかかわる陳情書

 

 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。

 さて、当会が2003年1月28日、函館市長宛てに提出した《「函館市中央図書館」建設に
ついての質問・要望および意見書》に対し、5カ月間もの長期にわたる検討を頂いた結果、
6月4日付で函館市金山正智教育長名による文書回答をいただき、回答趣旨のご説明も有りました。

しかし、残念ながら多くの重要な質問については未回答であり、また回答部分も総じて2002年6月に
策定された基本計画の内容の繰り返しが多く、今日までの検討結果が反映されたものとは思えません。
よって“函館の新図書館にのぞむ会”(以下当会)は、市議会に対し以下の事項について検討し、善処
されることを要望するものです。

                      

                                  要 旨

一、市当局は、緑地率30%確保の算定根拠を明示し、緑地の各部分ごとの面積を明らかにすること。

 

二、市当局は、敷地の南側に当たる角地ブロックの建蔽率を緩和するため設計変更も視野に入れた
対策をとること。

 

三、市当局は、図書館の中身をよりベターなものにするため建設完成までの全体的な工程表を
明示して、残された課題を明らかにすること。

 

四、市当局は、図書館完成後の維持管理、大規模修繕費見込み額を提示すること。

 

五、市当局は、新図書館完成にむけて、市民の声を広く取り入れるためのワークショップ方式等を採用すること。

 

六、市当局は、図書館利用に関する「個人情報保護」の条例化を実現すること。

 

七、その他の要望事項(要旨のみ)。

 

@ 資料(図書)収集の基本方針の明示。

A 必要な職員数の確保(とくに司書資格者)についての方針の明示。

   B 開館日数の増加、開館時間の延長、貸し出し者制限の廃止、特別整理期間の
   短縮などを新図書館開館以前でも早急に実施。

C 検索サービスの充実・ネットワーク構築についての具体策の明示。

D 資料収集費の予算増額への方策の明示。

E 閲覧室のプライバシーと静穏性の確保についての疑問。

F 再生可能性エネルギーの利用について見込み試算の提示。

 

                (本 文)

 

一、市当局は、緑地率30%確保の算定根拠を明示し、緑地の各部分ごとの
  面積を明らかにすること。

 

 6月4日、市当局は「基本設計に基づき、図面上でスケールアップいたしますと、
約30%の面積を確保することになっており」「ご指摘の緑化率は概ね確保できる
ものと考えております」と回答しました。そこで当会は、緑地個所を合計で示すだけ
ではなく、個別にそれぞれの計算数値を提示してほしいと申し入れたところ、
6月25日に以下の様な提示がありました。

 

建築本体(1F)            4,995u、   42.67%

駐車場                 2,700u、   23.06%

駐輪場・BMアプローチ・ドライブスルー   367u、    3.14%

アプローチ・その他             200u、    1.71%

緑地等(中庭を含む)          3,445u、   29.42%

計                  11,707u、  100.00%

 

しかし、提示された概数では当会の要求を満たしておらず、しかも緑地については
「緑地等」という表現で、純然たる緑地そのものではなく「緑地を含む残地」を指すの
ではないかとの疑いを持たざるを得ません。それにもかかわらず、市当局は当会への回答、
さらには議会の答弁でも「緑被(地)率は30%」と再三にわたって強調しています。

 ちなみに6月4日、提示された緑地対象部分を示す平面図を基に、当会が測量士に
依頼して緑地面積を算出させたところ緑地率は18
.8%であり、回答とは大きな隔たりが
あります。

 なぜこのように数値が大きく食い違うのかを究明するため、基本設計の原図(または
無縮小コピー)を提出し、当会が求めたとおり個別の緑地面積を算出し、その合計数値を
明確に照らし合わせることが必要だと思います。

市当局の早急な対応を求めます。

 実施設計が完成してから、緑地率の計算はまちがっていた、あるいは勘違いであった等が
ないよう、現時点で納得の出来る根拠を明らかにすることが市民への責務だと考えます。

 

二、市当局は、敷地の南側に当たる角地ブロックの建蔽率を緩和するため設計変更も
  視野に入れた対策をとること。

 

 市当局の回答は「建蔽率の対象となる敷地は、建築基準法上、敷地の底地のほか、附帯する
駐車場や緑地などを含めた建築物の用途上、不可分となる一団の敷地全体に対する規定であり、
敷地の一部分に対する規定ではありません」「現段階での建蔽率は約47%となっており」
建築基準法(以下建基法)の上限である70%を超えていないので問題がないとしています。

 しかし、当会は建基法上の規定を承知した上で要望しているのであり、このような通り一遍の
回答を求めたのではありません。

 当会が問題としているのは、建基法に適合しているかどうかではなく、1月に市当局に提出した
意見書で指摘しているように、角地を含む南側ブロック(施設面積のうち全体の35%を占める)の
建物部分が70%の建蔽率になる事なのです。

 建設地の北側部分に過大とも思われる駐車場面積をとったため残りの敷地に建物がしわ寄せされ
全体的にアンバランスな配置となっております。

他のブロックが52%である点からしても、このブロック周辺住民に対し格段の圧迫感を与えている
ことは疑う余地もありません。

 建基法は最低の基準を定めたものですから、公共の建物は敷地に対して基準よりゆとりのある建て方を
するのが本来のあるべき姿です。ましてやこの地域の建蔽率は通常60%で、70%というのは角地の特例を
適用してやっとクリアーしている数字です。

公共施設である限り近隣住民との良好な関係を保ちつづける配慮があってしかるべきであり、設計変更も
視野に入れ、南側角地ブロックの建蔽率を最高でも60%以下とするように求めているのです。

 

三、市当局は、図書館の中身をよりベターなものにするため建物完成までの全体的な工程表を明示して、
残された課題を明らかにすること。

 

 市当局の回答は「管理運営内容や体制づくり」の「検討作業を進めているところであり、早い段階で
一定の考え方を整理し、ご検討を伺ってまいりたい」と答えるにとどまっています。口頭で「一定の考え方
を整理」する「早い段階」が「今年の秋」であることを示しましたが、秋ではすでに実施設計も終局段階で
あり、本来、事前に実施設計に反映させるべき内容が依然として煮詰まっていないことになります。

また、「整理」とはどういう内容を意味するものなのかも不明です。さらに、これでは昨年11月に、当会と
市の生涯学習部と意見交換した際の発言と何の変わりもなく、以来回答までの7カ月間どのような「検討作業を
進めて来たのか」理解に苦しむところであります。

 このような情況を招く原因のひとつは、市当局が図書館完成までの全体的な業務スケジュール、つまり仕事の
手順を表す工程表を明らかにしていないことにあります。どのような公共事業であれ、計画から完成まで各種業務の
工程表作成は自明のものであり、工程表に従って進捗管理が行われ、予定が遅れたり、予期せぬ問題が発生すれば、
関係者との意見交換を通じて工程計画を変更していくのは、当たり前のことなのです。

早急に工程表を開示することにより、多くの市民が図書館の建設に受益者としての意識を高め、更に貴重な提言も
期待できるのではと当会が提案しても、なお現在に至るまで明らかにしようとはしません。

 市当局が工程表を開示することを強く求めます。

 

四、市当局は、図書館完成後の維持管理、大規模修繕費見込み額を提示すること。

 

市当局は「今後、実施設計における電気、空調等の方式が明らかになった段階で維持管理費について検討する」と
回答するだけでしたが、少なくとも現在想定できる2、3通りの仕様(標準とその上級、下級)で試算、見積もりを
出させることは十分可能なはずであり、必要不可欠なことです。維持管理費や大規模修繕費を見積ることもなしに
計画を進めていく手順には、大きな疑問と将来への危惧を持たざるをえません。少なくとも、民間ベースの事業では
まったく考えられないことです。

 とくに、公共施設は建築時には国や道からの高い比率の補助があっても、建築後の大規模修繕費や改修費には補助率も
低く、維持管理費や運営費は運営主体である地方自治体の単独負担が通常である以上、早い段階でそれらの目安を出して
対応策を取ることが必要不可欠と思います。

 新図書館の維持管理・運営費・大規模修繕費について函館市だけで負担できる適正な額や限度があるはずです。
その額によっては、実施設計の内容を変更することも選択肢に入れなければなりません。

建築後の費用負担を事前に適正に算出し対応しなかったために、作ったはいいが十分な維持修繕費や運営費を
手当てできず開店休業になったり、縮小を余儀なくされる公共施設が全国各地に目立っています。

 せっかく完成した図書館が建物は立派だが、中身はお粗末と言われないよう、早急に維持管理・運営費・大規模
修繕費の試算・見積もりを提示するように求めます。

 

五、市当局は、新図書館完成にむけて、市民の声を広く取り入れるためのワークショップ方式等を採用すること。

 

 ワークショップ方式について回答は「中央図書館建設懇話会を設置し協議検討してきたのをはじめ、市議会の所管委員会、
図書館協議会、社会教育委員の会議、さらにはシンポジウムの開催やアンケートの実施など、様々な形で可能な限り市民意見の
反映に努めてきた」「特に、建設懇話会につきましては、学識経験者や関係団体の代表の方、一般から公募した委員など、各界各層の
方々で構成しており、私どもとしては、ワークショップ方式の要素を採り入れた対応をしております」としていますが、建設懇話会の設置・
運用の実態はワークショップ方式とはまったく異なっています。何よりも図書館のソフト、システム、ハードのすべての面にわたる実質的な
決定権限(少なくとも集約意見を最大限尊重してその実現に行政が努力する義務規定)を与えていないこと、論議内容をハード面に
限定していること、構成員に図書館の専門コンサルタントや設計者が加わっていないことなど、「ワークショップ方式の要素を採り入れた
対応」にはまったくなっていません。

 また「市議会の所管委員会、図書館協議会、社会教育委員の会議」はそれぞれの限定した機能を果たすために設けられた存在に
とどまります。さらには「シンポジウムの開催やアンケートの実施」をしたからといって「様々な形で可能な限り市民意見の反映に
努めてきた」ことにもなりません。

市民が利用したいと思う図書館にするためには、行政が市民の意見を聞いたり、市民の意見を「反映」したりするだけではなく、
市民の参加を保証し、それに向けて最大限の努力をすることが必要です。市民参加を保証しないままの市民意見の「反映」はあくまでも
限定的な意味しかなく、十分とは言えないということです。

 そして「私どもとしては、ワークショップ方式の要素を採り入れた対応をしております」という回答は、市側がワークショップ方式の必要性や
効果を一応は認めていることを意味しますが、そうであればここで述べた当会の指摘を受け入れて今からでもすぐにワークショップ方式に
よる新図書館建設への取り組みを始めるべきでしょう。

 

六、市当局は、図書館利用に関する「個人情報保護」の条例化を実現すること

 

回答は「図書館の利用にかかわる個人情報については、市の個人情報保護条例が適用され、その保護が図られております」
「地方公務員法においても、職員に秘守義務を課し、その違反に対する罰則も定めておりますので、新たな条例の制定をする必要は
ない」としています。しかし、この回答には大きな誤りがあります。

 函館市個人情報保護条例(函館市条例第30号、1990年12月20日制定、91年6月1日施行)は、第7章第22条第2項で「この条例は、
図書館その他の市の施設において、一般の利用に供することを目的として管理している個人情報の記録については、適用しない」としており、
図書館利用に伴う個人情報は適用除外になっています。その後の部分改正(96年条例33号、2001年同7号、02年同35号)でもこの項目は
改正されていません。このような事実誤認は条例の施行責任を負う部署として非常に重大な問題であり、きわめて遺憾なことです。早急に事実を
確認し訂正のうえ責任を明確にすることを求めます。

 また、同条例には罰則がありません。地方公務員法による守秘義務、罰則規定が嘱託者や市の委託を受けた民間業者などにどこまで厳密
かつ十分に適用されるのか定かでない以上、不備だらけの現在の図書館条例を抜本的に改正して個人情報の保護と違反した際の罰則規定を
設ける必要性は少しもなくなっていません。

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