申請者:NPO法人 はこだて街なかプロジェクト
テーマ:函館西部地区の景観形成街路沿い商店に屋外看板の提案と実践
希望金額:1,000,000円 / 助成額:1,000,000円
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講評 |
運営委員長 木村 健一 |
景観形成街路に対するデザインコントロールが強化される中で、その指針になるような美しく魅力的な屋外看板を提案し、実際に設置しようという野心的な試みに注目が集まった。規制強化は街並みに秩序をもたらす一方で、表現の萎縮を招きかねない側面もあるが、本プロジェクトは、西部地区に相応しいのびのびとしたデザイン表現を住民を巻き込みながら模索しようとしている。当該地区には、もともと隣接する美しい建築に住民が相互触発されながら、更に美しいものを生み出すという気風がある。看板に対しても同様のシナジー効果の生成につながりそうです。 |
講評 |
運営委員 森下 満 |
昨年12月、函館市では都市景観形成地域の景観誘導し策の見直しがおこなわれたが、その目玉は景観形成街路沿道区域の指定と基準の見直しであろう。二十間坂のアイストップに設置されたマルキタ北村水産の自由の女神像があきらかに景観にそぐわず、大きな問題となったが、このようなことが二度と起こらぬよう、遅ればせながら対策を講じたものである。
本活動は、その機会をとらえて、景観形成街路沿いの屋外看板を町並み景観にふさわしいデザインにする提案と実践をおこなおうとするものであるが、以下の点で高く評価されるものである。
1)一般的に、町並み保存にかかわる諸制度は、最低限を保証するものであり、最高のものを創出する設計にはなっていない。本活動は、西部地区の屋外看板について最高のものを創出しようとしている。
2)町並み保存は、古い歴史ある建物群を大切に残していくことが肝要だが、それと同様に、新しいものをいかにして創り出していくかが重要である。本活動は、西部地区の新しい屋外看板のあり方について、地域住民の参画と協働をともないながら、自主ルールづくりから実際の製作・取付けまでの一連の活動を実施しようとしている。
また、今後の長期にわたる西部地区の歴史的景観の維持と向上を視野に入れている点も評価されるが、そのためにも初年度の活動が十分な成果をあげられるかどうかが鍵になる。それがうまくいけば、初速がついて、この活動は大きく展開し、飛躍する可能性を秘めている。 |
講評 |
運営委員 足達 健夫 |
函館市の景観形成街路をめぐるデザインガイドラインを受けた、市民側からのアクションとも位置づけられる事業である。
比較的高額な申請費用にもかかわらず対象となる店が3軒ということで、広範囲かつ即時的な事業効果を期待することはむずかしい。またデザインの決定もこれからということで、計画の具体性がややとぼしい。
しかし近年の「わるい景観の出現」に端を発する「わるいものを消す」ムーブメントの一方で、「よいものを作り出したい」という精神を実行に移すことは重要である。屋外広告物による景観形成街路の景観・魅力の向上につながるとともに、町並み景観に対する保全意識が醸成される。見た目の美しさは函館色彩まちづくり基金の本質であり、助成に値する。調査からワークショップ・看板の製作・取り付けまでの一連のプロセスもたかく評価された。
ただ、決して大きくはない看板が対象である。ドラスティックな景観の変化は期待できないだろうし、それを期待してたとえば目立つ看板にするのは本末転倒だろう。申請時の精神を維持しつつ、この事業をきっかけとするムーブメントが末永く周囲に波及するような活動を展開してほしい。
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