カラスの話   その一

 

ぼや騒ぎが続いた。特段の不審者は見当たらない。
ビデオカメラを置いて、懸命に捜索したらなんと、犯人はカラスだった。
京都の神社で最近あった出来事だ。境内に立ててある、火のついた
ロウソクをくわえて飛び立つ姿がビデオに写っていた。ロウの表面に
塗られたヤシの油が好物らしい。
カラスは餌を林などに隠す習性がある。

落ち葉の下にもぐりこませたロウソクの火が燃え広がって・・・
手ごわい鳥だ。何せ賢い。知能は犬や猫と同レベル。ごみをあさる。
人間をからかう。
時に襲う。どうやって撃退すればいいのか。  
これまでは視覚と聴覚に頼ってきた。目玉模様や猛きん類の模型を置く。
空砲や爆発音で脅かす。
だが、残念ながら、これらの効果は一時的で、知恵者である
カラスはじきに慣れてしまう。いま注目されているのは、嫌いな味に
よる撃退法という。宇都宮大の杉田昭栄教授が研究している。何でも
食べるカラスは味覚音痴とされてきたが、そのカラスにも、苦手な味が
あることが分かった。
嫌うのは順に、{苦い} {酸っぱい} 
{辛い}。こうした味をしみこませたポリ袋を商品化し、ごみ袋を
破られないようにしようと
いうわけだ。
ヒトとカラスとの知恵比べ「味覚編」。袋の費用は
割高だが、実験の成果は上々とか。カラスの百倍の脳重量を持ちながら
翻弄されっぱなしだった人間が、果たして一矢を報いられるか。

        北海道新聞 2002.11.22「卓上四季」より

   
   
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