という事です。現状ではソフト、システム面についてどういう向上策がとられるかが示されて
いませんが、仮にそうした改善策がとられないとすると、利用者は表4のi(b)は325人では
なく、272人、192.9%の増加にとどまり、利用者数の割合は全体の53.5%、非利用者数は
40.0%ということになります。
上記の数字は場所が現在より便利な所(五稜郭地区)に移り、建物が新しくなって駐車もしやすく
なるといったハード面の条件の変化のみによるもので、いわば自然増ともいうべきものです。
図書館の中身をよくするという根本の努力による利用者数の増加という点にもっと目を向ける
必要があります。
A 貸し出し冊数4.8倍、貸し出し人数14.3倍を実現する方策を示すことが必要です
中央図書館(以下「新図書館」)の計画数値と現本館(以下「現図書館」)の実績値には表5に示す
ように著しい格差があります。この格差は現図書館の数字が実績値であるのに対して、新図書館の
数字は公共図書館としての「望ましい基準」に人口などを掛け合わせてはじき出した数字をそのまま
あげていることからくるものです。
表5 現・新図書館の総括比較1
整理記号 |
項目 |
現図書館(a) |
新図書館(b) |
比率(b/a)% |
k |
年間貸し出し冊数 |
213,921冊 |
1,030,000冊 |
481.5% |
i |
年間貸し出し人数 |
35,896人 |
515,000人 |
1,434.7% |
m |
貸し出し登録者数 |
4,070人 |
− |
− |
n |
貸し出し登録者1人あたり 年間貸し出し冊数 |
52.6冊 |
− |
− |
【注】@数字は??を除いていずれも「函館市中央図書館建設基本計画」(函館市教育委員会)による
(p.6,7,35,41,49,59,62,63)A(a)の各項目の数字は2000年度。
この著しい格差は現図書館が「望ましい基準」といかにかけ離れた低劣な水準にとどまっているか
ということを示しています。現状の倍増程度の利用者の増加ではとてもこの著しい格差を
埋めることはできません。
この達成には現在とは比較にならな
いほどの市民への強力な働きかけと市民の支持が必要となります。いわば、いままでのように
ごく一部の市民しか利用しないという状態から、市民の多くが利用したいと望むような図書館を
新たに立ち上げるくらいの根本的な努力が必要です。
そのためにも「市民の多くが利用したいと望む図書館」を立ち上げるために他のいくつかの
先進的自治体がおこなってきたような市民参加型の方式(たとえば市民が中心になり、行政や
専門コンサルタントなども加わった「ワークショップ」方式)の採用などを真剣に検討することが
必要であると考えます。
B 資料収集方針を明らかにし、専門書等の格段の充実を
現図書館の蔵書は「一般書」が58.9%の構成比となっています(2000年度)。
しかし、一般書の中身は文学書(『日本10進分類法』による「00」)が多くの比率を占め、
専門書は貧弱なままです。
国立国会図書館法ですべての発行物の納本を求めている国会図書館と違って、公共図書館は
すべての分野の発行物を網羅するのはもとより無理な話です。収集量には限りがありますので、
特色をもった資料収集方針を打ち出し、それが市民の支持を得なければ図書館は市民から
利用されません。
現図書館がどういった資料収集方針を持っていたかは必ずしも明らかではありませんが、
実態としては文学書(とくに現代文学)にはなはだ偏った収集であったと思われます。これでは
より広範な市民層からの図書館利用者を増やしていくことは難しいと考えます。専門書の充実は、
生涯教育や就職・転職などに際しての再教育の必要性が増していることからもおおいに注力すべき
課題と考えます。
資料を7:2:1の比率で
資料収集の基本方針を中長期の方針を含めてできる限り具体的に分かりやすく示すことが
必要と考えます。その際、特徴のある図書館として専門書の格段の充実は重要課題でしょう。また、
市内にある大学、短大、高専の各図書館との連携を図り、これらの図書館の蔵書資料と貸し出しの
実態を把握したうえで、公共図書館としてこれらと重複しない効率的な専門書の格段の充実を図る
ことが必要でしょう。
U システム面について