現図書館は函館公園内の比較的高台にあるため「緑の森のなかの図書館」として周囲にも適合し、静寂な環境で
読書にも最適な条件が整っています。しかし、新図書館が建設される五稜郭・旧渡島支庁跡地は平地であり、すぐ
東横を市道東山墓園線(幅員15m)の幹線道路が走り、五稜郭公園は市道を挟んだ向こう側になります。交通が
便利になる代わりに今までに比べれば周囲の環境は大きく悪化し、交通騒音の影響も大きくなります。
「本の森」とも呼ばれる図書館は、緑の森の中にあってこそ最も調和できます。交通騒音を遮断し、
隣接する周辺の住宅地への圧迫感を緩和、五稜郭公園に連担する緑地の中の図書館とするために、
現在の基本設計素案のような低い緑被率を改めて、大幅に向上させることが必要です。
函館市内の緑被面積は、表7にみるとおり1999年までの13年間で468.3haもの
大幅な減少をきたしており、緑被率は10ポイントも低下してわずか17.9%にまでなっています。
表7 函館市内の緑被率比較
整理記号 |
調査年月 |
緑被面積(ha) |
緑被率(%) |
r |
1999年3月 |
832.7 |
17.9 |
g |
1986年6月 |
1,083.8 (1,296.5) |
25.4 (27.9) |
【注】@平成14年度版函館市環境白書によるA( )内は都市計画地域補正後
このような危機的な状況のなかで公共施設である図書館が建物の周囲への申し訳程度の植栽で
済ましていいはずがありません。私たちの概算では新図書館の緑被率は図1にみるとおり14.8%に
すぎません。これは表7の17.9%をも下回る数値であり、これでは市が率先して緑被率をさらに
引き下げる結果になります。
建蔽率が60%であることを考えれば緑被率は40%が望ましく、それが無理であれば最低でも
30%以上の緑被率を目指すようにするべきであり、それが図書館の望ましい姿でもあると考えます。
図 1 新図書館基本設計素案による緑被率
@ |
1220 |
u |
|
|
A |
58 |
u |
|
|
B |
167 |
u |
|
|
C |
42 |
u |
|
|
D |
254 |
u |
|
|
合計 |
1741 |
u |
|
|
|
|
|
|
|
緑地面積 |
= |
1741 |
= |
14.8% |
敷地面積 |
11700 |
A 敷地内に現存する樹木、シンジュ、クロマツ、アカマツを現状保存する
新図書館の敷地内樹木調査の結果、クロマツとシンジュ(ニワウルシ)の各1本の現状保存が
可能になった一方で、4本のアカマツについては「風倒危険木」として除去が予定されています。
北大構内のポプラ並木も同様な理由で強行伐採されましたが、風倒被害が出ないように手当て
することで保存することは技術的に可能です。4本のアカマツは五稜郭の誕生とともに140年を
超える歴史をともに生きてきたいわば生き証人であり、風倒危険があるからといって、まだ命が
ある樹木を切り倒すべきではありません。
私たちは4本のアカマツも含めた現状保存を求めます。
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